インフラ刑事:第4話「証拠」
薄暗い無機質な部屋には空調の音とCPUファンの回転音、室内には俯く1人を数人の男達が囲んでいる。まぁ、良くある取り調べというヤツだ。俺の目の前にある●onsterキ●ーバリ●レの缶を伝う滴がこの部屋の熱気とどれだけの時間が経過したかを物語っている。
事の発端は先週末のサーバー障害だ。原因はメモリ不足、何て事はないよくある内容だが、、、ただ奇妙な点が1つだけあった。サービスの内容・規模に対してサーバーが小さい。少なくとももう1ランク上のスペックが妥当なはずだ。
ホシは定期メンテナンスチームの1人、あと一息なのだが誰もサーバーのスペックは変更していないという。
「本当にしらないんだな?」
「そうですよ、僕らメンテナンスチームは毎月、定期手順しかやってないんですから」
そろそろ、新人のCPUも熱暴走しそうだな。俺はゆっくりと立ち上がり、残った●onsterキ●ーバリ●レを流し込む。
「何ですか、刑事さんまで疑うんですか?」
まぁ、疑っているからこその取り調べなんだがな。あくまでこの男は自分じゃない他にもシフトに入っていた人間もいたというスタンスのようだ。
「その日のシフトは私だけじゃないでしょう、何か証拠とかあったりするんですか?」
証拠か、、、その辺の監視には力を入れていなかったようで証拠になるようなものは今のところない。ただ、気になる事が1つだけある。俺は1枚のファイルを男に見せる。
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AWSTemplateFormatVersion: "2010-09-09"
Description: "ec2 instance cfn"
Parameters:
WebServerSecurityGroups:
Type: CommaDelimitedList
Default: sg-00000000000, sg-111111111
UseVPC:
Type: AWS::EC2::VPC::Id
Default: vpc-aaaaaaaaaaa
Resources:
WebServer:
Type: AWS::EC2::Instance
Properties:
SubnetId: "subnet-1111111"
ImageId: "ami-090909090909090"
InstanceType: "txx.xxxxxx"
KeyName: "web-server-key"
SecurityGroupIds:
Ref: WebServerSecurityGroups
BlockDeviceMappings:
- DeviceName: "/dev/sda1"
Ebs:
VolumeType: gp2
VolumeSize: 50
DeleteOnTermination: False
Encrypted: False
Tags:
- Key: "Category"
Value: "Server"
- Key: "Name"
Value: "ServiceServer"
「なんですか、これ。これが証拠だって言うんですか?」
そう早合点しなさんな。気になるから見てくれないかと言っているんだ。言わば捜査協力ってやつさ。
コイツはCloudFormationのテンプレートってものでな。サーバーなどの資産をソースコードで管理、構築ができるってすぐれものだ。本当に便利な世の中になったもんだよ。君、知ってたかい?
「それがなんだっていうんですか。そんなの触ったことないですよ」
まぁつんけんしなさんな。気になっている事っていうのはな。
今回のサーバーはここ書いてあるサーバーのスペックより低いんだよ。
「そんなの知るわけないでしょう、そんなのが何の役に立つんですか」
男の声に苛立ちが色濃く見える、うんざりしているのだろう。
俺にゆっくりと男に対して質問を続ける。
だが・・・・このテンプレートが君の担当しているサービスのものだとしてもか?
「え・・・そんな・・・そんなのあるはず・・」
明らかな狼狽。
君のシフト前にちょうど作られたものだ。知らないのも無理はない。
その後、観念したのか男は素直に自白を始めた。
メンテナンスの再起動時にサーバーのタイプを変更したという。
「さすが、インフラ刑事ですね!!」
すっかりCPUも冷めた新人を横目に2本目の●onsterキ●ーバリ●レのプルタブを起こす。
「しっかし、コストダウンだと予算を削られた事への腹いせか・・・気持ちは分からなくもないですけどね」
そうだな。
インフラを真っ先にコスト削減の対象や値引きの対象にする事は珍しくない。
家を立てる時に土台を段ボールでつくるようなものなのだが、目の前のコストしか見えていないとそうなる。
コスト削減は結果であって手段じゃない。
今回のCloudFormationなどを使って構成管理や自動化、適切な監視やリソース選定、そういった努力があってコストが適性になり、その結果、コストが削減されたという方が理想だな。
「は〜・・・勉強になります。それにしてもあのテンプレートをいつのまに手に入れてたんですか?」
あれは先週、俺が練習で作ってたやつだ。ちゃんと動くかも怪しいもんだ。
その言葉に目を丸くする新人。
「え?・・・それじゃ、あれば全部ブラフ・・・カマかけたんですか?!ちょ・・・インフラ刑事!!」
あの男もまた被害者だ。同じような事が起きてまた誰かの涙が流れる事がなければ良いのだが。
俺はビルに沈む夕日を眺めながら●onsterキ●ーバリ●レを傾ける。