インフラ刑事:第2話「人とファイルの共通点」
スペシャリスト、コンサルタント、データアナリスト、、、光溢れる舞台に憧れて多くの人間が集まる街。
栄光の裏には挫折もある。それと同じだけの人間がこの街から離れていく。
今日もそんなこの街のネオンを眺めながら、俺は●onsterキ●ーバリ●レを傾ける。
夢を掴んだ者の涙も夢に敗れた者の涙も、この街は等しく受け止める。
そして涙の数だけ事件もまたやってくる。
「これは・・・・ひどいですね・・・」
手で口元を押さえて視線を逸らしているこいつは新米。
フィルムを剥がしたばかりのディスプレイのようなピカピカの新人だ。
目の前には「500 Internal Server Error」が冷たく転がっている。
この街じゃ珍しい事じゃない。
早いところ、お決まりの刑事ドラマのワンシーンみたいなリアクションから卒業して欲しいものだ。
「現場はナンシーさんのサーバーです。今朝、起きていつもの通り写真をアップしようとしたところを発見したそうです。」
ナンシーか。確か最近になって食べ過ぎが気になって食事をアップして自己管理する生活を始めたんだったな。
いつだったかカロリー0の●onsterウルト●パラ●イスにしろと言われたが。
「外傷はないみたいですが・・・ウィルスとかでしょうか」
テレビドラマの見過ぎだ。事件ってのはもっと泥臭く人間臭いものさ。
俺はsshで繋ぎ、現場を確認する。
メモリもCPUも正常、特にプロセスに問題があるわけでもなさそうだ。
「あ!もしかして急な発作とか!!」
お前は見ただけでカレーの辛さを当てられるのか?
赤いから辛いと言っているようなものだ。この仕事じゃ決めつけは禁物だ。
まてよ・・・?ナンシー・・・●onsterウルト●パラ●イス・・・俺の中で全てのピースがつながる。
俺は新米にディスク容量を調べさせ、犯人を見つけるために走り出す。
「ま・・・間違いないです!ディク使用量が96%です」
俺は新米の言葉で疑惑が確信に変わる。
こうなれば容疑者を絞り込むのは容易い。俺の勘があの場所を告げている
du -S /var | sort -n | tail -10
6368 /var/cache/yum/x86_64/7/base
8072 /var/cache/yum/x86_64/7/epel
8832 /var/cache/yum/x86_64/7/remi-safe/gen
13364 /var/cache/yum/x86_64/7/remi/gen
21528 /var/log/audit
29640 /var/cache/yum/x86_64/7/epel/gen
31184 /var/cache/yum/x86_64/7/updates/gen
80632 /var/cache/yum/x86_64/7/base/gen
94572 /var/lib/rpm
2097152 /var/log/httpd
やはりな・・・これで容疑者の居場所は絞り込める。
find /var/log -size +1M | xargs ls -lh | sort -r
-rw-r--r-- 1 root root 2.0G 8月 1 16:27 /var/log/httpd/access_log
-rw-------. 1 root root 1.5M 12月 22 2019 /var/log/anaconda/journal.log
-rw------- 1 root root 5.1M 8月 1 16:25 /var/log/audit/audit.log
-r--------. 1 root root 8.1M 4月 2 17:22 /var/log/audit/audit.log.2
-r-------- 1 root root 8.1M 6月 8 14:32 /var/log/audit/audit.log.1
ディスク容量に対して、ここまで大きくなってしまってはもう取り返しはつかないだろう。
俺は肥大化したlogファイルにrmコマンドの引き金を引く。
適切なログローテーションかもう少し潤沢なディスク容量、もしくはディスク監視があればこんな事にはならなかっただろう、、、そう考えるとこのlogファイルも被害者なのかもしれない。
「インフラ刑事!ナンシーから正常に動いたと連絡がありました!」
「でもよく分かりましたね」
ナンシーも自分の事は気にしててもファイルがファットになっているのには気付かなかったみたいだな。
- 肥大化しやすいlogファイルはローテーションする
- ディスク容量を監視して必要のないファイルは退避する
人間もファイルも太りやすいんだ。たまにはチェックが必要という事だな。
今回はほんの少しの注意で防げたはずだが、ナンシーにはアドバイスをしておいた。
消したlogファイルは気の毒だったが、これでまた1つこの街の涙を止められただろう。
この街のネオンを眺めながらそんな事を考え、俺は●onsterウルト●パラ●イスを傾ける。